修行時代に先生に言われた印象的な言葉【2】2012年08月04日 12時28分


「キャリアを築く為には戦わないといけない」
(パスカル・ドヴァイヨン先生)

ベルリン留学時代。
スペインのハエンコンクールで賞に入ったことをレッスンで報告すると
ドヴァイヨン先生は開口一番、
「それで、その後どうしたの?」と私に質問しました。

その後?と聞かれても咄嗟に答えが出ません。
ミラノに寄って、美味しいものを食べてベルリンに戻っただけだったので、
「何もしません、ミラノで遊んで帰ってきました。」と答えたら先生は
「ススムは子供だねぇ。」とため息まじりに呆れられました。

受賞した事を、少なくともスペインのすべてのオーケストラと
思いつく限りのエージェントに、なぜ売り込んで帰って来ないんだ、
(笑いながらですが)とこの時先生に怒られたのです。

「ピアニストなんていくらでもいるんだから、少しでも自分を売り込まないと。
練習は自分のすべてのエネルギーの3分の2、あとの3分の1は電話
をしたり、今後の事を考える時間に当てないといけないよ。
これは戦いなんだからね。」

先生が、普段音楽の事ばかりをレッスンで注意し、本来はもっとキャリア
作りのアドヴァイスをしなければならない・・と、自分に言い聞かせる
ようにおっしゃっていたのが印象的でした。

プレトニョフが優勝した年にチャイコフスキーコンクールで2位に
入賞したり、数々の名録音を残した輝かしいキャリアの持ち主である
先生からくると、この言葉はとても重いものに感じられました。

良い演奏を心掛けながら常に自分の立ち位置をアピールし続けて
行く事が、音楽家として生き残っていく大事なファクターの一つなのでしょう。

帰宅後、録音、経歴、新聞の批評記事のコピーをスペイン10数カ所の
オーケストラと事務所に郵送しましたが「親切な事務所は書類を送り
返してくれた」だけで、受賞コンサート以外は何も起こりませんでした。

私のstruggling daysは決して短いものではありませんでしたが、
この経験は今の私の弟や妹たちに面白い話をして聞かせる「養分」には
充分なったと考えています。


青柳 晋(ピアノ)

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