音楽によるつながり2012年08月18日 10時43分

震災後、予定していた演奏会は全てキャンセル、
または延期となりました。

四日間の停電、十数日の断水、ガス復旧までにほぼ一ヶ月という
状況下、ただ生きるために生きているような毎日でした。

音楽を仕事として一生携わるということに、初めて疑問を感じました。

何と役に立たないことをやっているのだろう。
全てがそろった平和な状態でないと、こんなに必要とされないもの
なのだろうか。
私には誰のことも助けることができない。

仙台市内の音楽ホールは4つだけ生き残り、他はしばらく使えない
状態でした。

その貴重な4つのうちの一つを、私は自分の演奏会のために
予約してありました。
しかし、その貴重な演奏の場をもっと多くの人とつながりに活かせ
ないかと思い、急遽、「宮城学院女子大学音楽科OG有志による
チャリティコンサート」に変更し開催しました。

震災後の混乱の中、知り合いに片っ端から連絡したところ、
合唱参加者として137名ものOGが出演を希望してくれました。
余震の中、皆で練習し、当日は会場全体が一つの思いでつながり、
皆が涙した演奏会となりました。

このチャリティコンサート活動は、インターネットを通じて、遠く富山の
方々の心ともつながり、富山の強力なスタッフたちにより、今年2月
富山公演が実現しました。

宮城学院女子大学音楽科OG有志によるチャリティコンサートは
今後も続いて行きます。

この11月には多賀城にて、来年2月には再び富山にて開催予定です。

音楽により多くの方々のあたたかな心とつながり、その思いは遠くまで
届き、皆と音楽をすることができますことに、感謝しています。


髙橋麻子(ピアノ)

ギターの歴史2012年08月18日 11時36分


トーレスによってギターは多彩な音色の変化、音量を獲得しました。
この楽器を使って近代のギター奏法の基礎を確立したのが
「アルハンブラの思い出」で有名なフランシスコ・タレガであり、
その奏法は門下のリョベートやセゴビアに伝播していったのです。

しかしギターのレパートリーは、ヨーロッパ圏内にとどまりません
でした。まだまだ違う音楽の波があったのです。

最も注目すべきは、ギター音楽の南米への波及です。
1492年のコロンブスの西インド諸島発見とともに、一気にヨーロッパ
文化が南米に流れ込みました。

16世紀初頭、スペインで完成し、初期の対位法を生み出した楽器
ビウェラはギターの祖先とも言える楽器です。
現在の研究では、この楽器は2つの方向に伝播しました。
ひとつは北へ、つまりメキシコ方向に。もうひとつの流れは南へ、
チリを含む南米方向に向かったようです。

その後、二百年以上の歳月をかけて、ヨーロッパの音楽はゆっくり
ゆっくり中南米と南米に浸透するとともに新しい音楽が生まれて
いきました。
新しい音楽を生み出す原動力となったのが黒人たち、すなわち
アフリカから連れてこられた奴隷たちの音楽です。
例えば彼らの音楽のなかでも、キューバのハバナを経由して
もたらされたハバナ風の踊りと言うことで、「ハバネラ」。
これが後のタンゴの原型なのです。

さて、今回の「せんくら」でフルートの荒川洋さんと演奏する
アストル・ピアソラの名作「タンゴの歴史」は、そのタンゴの発展の
有様を20世紀初頭から表現した名曲です。

話は1900年、ブエノスアイレスの場末の酒場から始まります。

この続きはまた明日…


福田進一(ギター)