髙橋麻子です ― 2012年08月17日 10時00分

今回、初めてのせんくらにて、9月30日、ショパンのスケルツォ4曲と
幻想即興曲を演奏させて頂くことになりました。
私は仙台出身、ベルリンとザルツブルグに7年程留学しましたが、
帰国後も仙台在住、宮城学院女子大学音楽科にて講師をし、
同時に演奏活動をしています。
震災で、私の生徒たちはたくさんのものを失いました。
家を流された学生、原発のため家に帰れず避難し続ける学生、
そしてお母様とともに津波にのまれ命を落とした学生がいます。
その亡くなった生徒が最後に弾いていたのがスケルツォ2番でした。
今回、スケルツォ4曲という依頼を受けた時には正直、悩みました。
震災後、涙で最後まで聴くことさえできず避けてきたスケルツォを、
私は弾くことができるのだろうか?と思いました。
しかし、その生徒が、弾いて欲しいと言っているようにも思い、
今回弾かせて頂くことになりました。
津波から奇跡的に救助された、彼女のお祖母様とお話しましたが、
当日聴きにいらしてくださるとのことでした。
心をこめて準備したいと思います。
髙橋麻子(ピアノ)
福田進一です。 ― 2012年08月17日 10時02分

さて、昨年はスケジュールが重なり出演出来なかった
「せんくら」ですが、今年は参ります!
2回のソロ・リサイタル、デュオ・リサイタル(長谷川陽子さんのチェロ)
そして室内楽トリオ(荒川洋さんのフルート、佐々木真史さんのヴィオラ)
の四つのプログラムを聴いて頂きます。
このブログ・エッセイの初回はギターの基礎知識を少し…
ギターは実に豊かな音楽の土壌を持った楽器です。
つまり、世界各地にそれぞれ独自のギター文化があるのです。
ギターの母国スペインにはフラメンコ音楽の生まれる遥か以前、
ルネサンスから伝わるギター音楽の伝統がありました。
その音楽の波は姉妹楽器とも言えるリュート音楽と合わせてヨーロッパ
全域にゆったりと浸透していったのです。
リュートはアラビアのウードが起源ですが、シェイクスピアの時代に
なってイギリスで頂点を極めたのち、南に波及しました。
後に、イタリアには高い音域のリュートからマンドリンが生まれましたし、
フランスの宮廷では食卓の音楽として、スペインでも舞踊の伴奏として
5コース(各弦が2本ずつ組み合わさった複弦をコースと呼びます)の
ギターが活躍しました。
さらにドイツでは13コースもの弦を持つバロック・リュートという広い音域
の楽器が生まれ活躍しました。
しかし、古典期になってリュートは徐々に影が薄くなっていきます。
1800年頃、ヨーロッパのギターは突然現代の6本弦の楽器に統合
されました。この経緯は今もって多くの謎があります。
ともあれ、このエレガントな楽器は流行し、多くの名手を生み出しました。
今回のせんくらで長谷川陽子さんと共演するシューベルトなど、
ギターを使って作曲していたことが知られていますが、それが今お話
している19世紀初頭のギター(通称19世紀ギター)です。
さらに時代が進み、19世紀の後半にスペインでアントニオ・デ・トーレス
という天才的な製作家が登場します。
彼はギターのサイズを大きく改良し、共鳴板の裏に複雑な力木の配置
を考えました。
今日のギターはそのほとんどがこのトーレスのシステムを元祖としています。
トーレスによってギターは多彩な音色の変化、音量を獲得しました。
この楽器を使って近代のギター奏法の基礎を確立したのがアルハンブラの
思い出で有名なフランシスコ・タレガであり、その奏法は門下の
リョベートやセゴビアに伝播していったのです。
しかしギターのレパートリーは、ヨーロッパ圏内にとどまりませんでした。
まだまだ違う音楽の波があったのです。
話の続きはまた明日…
Shin-Ichi FUKUDA(ギター)
※写真はドイツ・コブレンツ(ライン川のほとり)にて 2012年5月
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